京都アヤワスカ茶会裁判の概要は「『お茶』は『麻薬』なのかー京都アヤワスカ茶会裁判」にまとめました。
「アヤワスカ」とは、南米、アマゾン川上流域の先住民族が伝統的に使用してきた薬草茶です。私じしんがペルー・アマゾンで2000〜2001年にかけて調査したときの映像は、下のページに多数アップしておきました。
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その有効成分は、精神展開薬(サイケデリックス)の一種である、DMT(N, N-ジメチルトリプタミン)です。
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アマゾンの先住民族の人々は、アヤワスカ茶を飲むことによって、精霊たちと出会い、世界の仕組みや、病気の治し方などの知識を教えてもらうといいます。いわば、意識は目覚めたまま夢を見ているような状態です。
DMTは、やはり南米原産の植物である、ミモザの中から発見されましたが、その後、ミカンやレモン、アカシアやクサヨシなど、多くの植物に含まれていることがわかってきました。捕食者である昆虫を寄せつけない作用があると考えられています。
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DMTは、セロトニン(5-HT)とよく似た構造を持っており、人間の脳内では、セロトニンと同じような、神経伝達物質として機能しています。
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DMTは、脳内では早朝に多く分泌されます。さわやかで落ち着いた覚醒感を作り出します。同じような構造の物質であるメラトニンは、夜間に多く分泌され、睡眠状態を引き起こします。分娩の時にも分泌され、子宮を収縮させる作用もあります。
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DMTは、低酸素状態など、生命の危機にさいしても大量に分泌され、神経細胞を保護する作用があることも明らかになってきました。DMTには強い精神展開(サイケデリック)作用がありますが、死に瀕した人が臨死体験の中で、極楽往生するような体験をするのは、DMTが大量に分泌されるからだと考えられています。
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うつ病や不安障害は、セロトニンの不足によって起こるという仮説があります。セロトニンの不足を防止するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、うつ病や不安障害の治療薬として使われています。DMTも、やはりセロトニン系のはたらきを活性化させてうつ病や不安障害を改善することが知られていますが、乱用薬物として規制されているため、病気を治療するための薬として使用することが法的に難しい現状があります。
ただし、ブラジルでは、政府が認可した宗教団体にかぎって使用が合法化されており、宗教団体と大学病院の共同研究で、長期間の服用で、精神状態に害があるというよりは、むしろ精神状態を良くするという結果が出てきています。
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DMTは、日本では「麻薬及び向精神薬取締法」という法律により、製造や所持が規制されています。法律上、精神展開薬は「麻薬」に指定されていますが、医学的には、「麻薬」とは、アヘンやモルヒネなど、依存性の強い鎮痛薬のことで、精神展開薬はまったく違う種類の向精神薬なのですが、歴史的な経緯で、法律と医学がバラバラになったまま、今に至ります。
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いわゆる「麻薬」の法的規制は、もともとは、狭義の麻薬、つまりアヘンやモルヒネの乱用を防ぐために始まったのですが、その後、過眠症の薬として有効だったアンフェタミン類(覚醒剤)が暴力団の資金源になるなど、乱用事件が起こるたびに新たな向精神薬が規制の対象として追加されてきました。いったん規制されると「麻薬」とされ、医療用などの有効利用が難しくなってしまうという状況が続いてきました。
いっぽう、酒やタバコなど、有害でありながらも社会に定着し、税収によって社会を支えてきた薬物の危険性も看過できません。現在、国際的な枠組みで、「麻薬」の安全性や危険性を医学的なエビデンスにもとづいて整理しなおし、所持しているだけで犯罪とされるような仕組みの見なおしが進んでいます。
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記述の自己評価 ★★★☆☆(資料)
CE 2020/09/06 JST 作成
CE 2020/10/23 JST 最終更新
蛭川立