「酔った勢いで人生はこわれる」

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誰の人生が壊れるのだろうか?

日本における殺人事件の加害者がアルコールによる酩酊状態にあったかどうか、警察の統計を調べても、1960年ごろより古いものしかない。その「最新」のデータでは約30%であった。

暴力事件のうち61%がアルコールによる酩酊状態だった、という数字が載ったポスターを見た。概念の定義が曖昧だから、有効数字は2桁には届かないだろう。

もうひとつ、松本俊彦の最新の著作を手に入れた。

自殺者のうち30〜40%程度がアルコールによる酩酊状態だったという。これは知らなかったが、殺人と同じぐらい高い。

アルコールは自傷よりも他害の危険性のほうがはるかに高いと誤解していたが、それはイギリスでの研究であって、日本はもっと自傷文化なのだろう。

1990年代にミクロネシア・ヤップ島でも、アルコール中毒自傷問題が論じられているのを聞いたが、特殊な文化の特殊な問題だと思い、日本に戻った後も、そのことはあまり考えてこなかったが、今から振り返ると、西太平洋における「恥の文化」という文化圏にヤポネシアを加えようというアイディアとも結びついているように思う。



日本では、他の向精神薬に対し、アルコールについての法的規制が甘すぎる、とは、かねてより考えてきたことだが、最近、離婚の事由の中に、酒という言葉を発見した。

民法七七〇条には、夫婦の合意なしに離婚の訴えが可能な、五個の項目がある。

第770条
1. 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

このことは、社会常識として、以前から、だいたい知っていたし、「強度の精神病」とは意味不明だとも、かねてより考えてきた。

さて、法律ではないが、調停離婚の手続きに必要な、夫婦関係等調整調停申立書
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html
に、以下のようにあるのを発見した。アルコールと犯罪の関係について、ネット上で検索していたときに、たまたま発見したものである。

1、性格があわない
2、異性関係
3、暴力をふるう
4、酒を飲みすぎる
5、性的不調和
6、浪費する
7、病気
8、精神的に虐待する
9、家族をすててかえりみない
10、家族と折り合いが悪い
11、同居に応じない
12、生活費を渡さない
13、その他

民法七七〇条の条文との対応を見ると、一に対応するのが2であり、二に対応するのは、9や、あるいは11や12も関係があるかもしれない。三は、これはよくわからない。四は、7の「病気」に含まれるだろうか。五は、その他であるから、その示すところは不明確だが、性格が合わない、酒を飲みすぎる、など、家族法の条文にはない、「その他」の主要なものを知ることができる。

ここで、酒(エチルアルコール)という向精神薬の名前が登場する。その他の向精神薬や、嗜好飲料等の名前はない。覚醒剤やコカインなど、違法薬物は、離婚以前に、刑事犯罪になってしまうから、除外されているのだろうか。合法的なものとしては、カフェイン飲料や、その他、合法ドラッグと呼ばれるものは無数にあるだろうが、ここでは、アルコールだけが、有害な薬物の代表例として挙げられている。日本の司法がアルコールについて甘すぎる、というばかりではない、という例のひとつである。



記述の自己評価 ★☆☆☆☆
(思いついたことを日記的に書いたもので、学術的な正確さは保証されないし、日本語の文法もおかしいところがある。)
CE2021/04/13 JST 作成
CE2021/04/13 JST 最終更新
蛭川立